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2021年12月25-26 甲斐駒ケ岳 黒戸尾根

「甲斐駒行ってみたいです」と言ったものの、

少し後悔していた。山頂までの累積標高差は2200M。

雪山はまだ2年目の私。

小屋泊にしてもらい、削れる装備は1グラム単位で削った。

あとは水分補給と足運びに気を付けよう。

 

さあ出発だ

 

登り始めはほとんど雪がなかったが

笹ノ平まで来るとチェーンスパイクを装着。

 

稜線まで上がって来るとやはり風が強い。

木々の切れ目から富士山や地蔵岳のオベリスクが見えた。

 

刃渡りに差し掛かると「アイゼンいるわ」と先頭のSLさんがUターン。

突風で舞った雪が顔面に吹き付ける。

平らな場所まで戻り、アイゼンに履き替えた。

 

その後は梯子と鎖が連続するゾーン。

梯子の一部は雪で埋もれており、ピッケルが頼もしい。

鎖の岩場もあったが、程よい雪量のお陰か、足場がしっかりあって問題ない。

 

ここまでは体力的にも余裕はあったが、

最後の垂直梯子が終った後の、あと少しが長かった!

七丈小屋に到着し受付を終え、安堵した。

 

七丈小屋前から。

ピンク色に染まる八ヶ岳連峰、今日イチの景色だった。

 

私達の通された七丈第二小屋は、

布団が12枚程並べてある仕切り付きの蚕棚だった。

この日は運良く貸し切り状態。

ストーブが焚かれ、カラッとした室内で濡れた装備がよく乾きそうだ。

6合目を過ぎた辺りででアイゼンの踵が外れたので明日に備え、固めに再調整しておいた。

 

翌日は4時半起床。

ストーブの前でカップ麺をすすり、ぬくぬくとした土間で乾いた靴を履き、不要な装備は小屋に置かせて頂き、キンキンに冷えた小屋外へ出る。

 

今日は甲斐駒ヶ岳山頂にアタックする。

 

小屋裏の急登は起きがけの身体には堪えた。

 

身体が温まった頃、遠くに岩に刺さった2本の刀剣が見えた。

 

刀剣を横切り大岩を右に巻く。

核心、ルンゼの急登を見上げると先行を行くパーティーのラッセル跡があった。

 

ピッケルを刺し雪壁を蹴り込み、踏み抜かないようそっと乗り込んで上がる。

視界の悪さが幸いして谷底は見えなかったが、

ここで滑ると赤石沢の岩壁を飛び越えて500mの滑落となるそうだ。

 

さらに尾根上にはスラブ状の岩があった。

所々むき出しの岩はカリカリに凍っていてピッケルが掛からない。改めて雪面に深く刺し、足裏に全神経を集中させて体勢を整えた。

 

下山して来た先行パーティに声を掛け、山頂に立った。

辺りは真っ白で南アルプスの山々はひとつも望むことが出来なかったが、私はそれでも満足だった。

 

山頂で温かいお湯を飲み、今度はスラブを下る。

先輩方が降りるのが早くて驚いた。

私はというと「10爪、10爪」と心で呟きながら足を出しているつもりだったが、こんな核心部で

「左足を下ろす時、右足の爪が浮いてるよ」とリーダーから指摘される。

自分の足に意識を向けると、土踏まず側5本の爪が一瞬浮く感じになり、自分に恐ろしくなった。

 

その後、七丈小屋まではパウダースノーで上手く降りれず、みるみる体力を消耗していった。

水面を走る水鳥のごとくスイスイと降りるリーダーが、

こうやって降りればいいんだよ、

とやって下さったがもう踏ん張りがきかなかった。

 

七丈小屋に置かせて頂いていた荷物をピックアップし、

一息ついたら下山。

 

やはり長く続く梯子は、

時々深く息を吐きながらゆっくりと降りた。

 

岩の窪みに爪がハマるのが楽しかった。足元を確認しながら落ち着いて降りられるのはアイゼントレのお陰だった。

 

下山後は駒ケ岳SAでソースかつ丼を食べ大渋滞にハマり、終電を逃し、先輩の家に御厄介になった。

 

不安だった黒戸尾根は温かな先輩方に見守られ

今後に繋がる特別な想いの詰まった山行となった。

 

7:50竹宇神社ー笹平ー11:50前屏風ノ頭ー16:10七丈第二小屋

6:00七丈第二小屋ー8:40甲斐駒ケ岳-10:15七丈第二小屋11:00-前屏風ノ頭ー16:10竹宇神社

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