4/10(土)
4年前、谷川連峰馬蹄形縦走の時に、<難路、道ナシ>とかかれた巻機山への道標を見て、
積雪期だけ歩けるルートがあると聞き、長く歩きたいと思っていたルート。
土合から主だったものだけで15のピークを越えながら稜線を北上する。
今年はさすがの豪雪地帯も雪が少ない。谷川岳の耳にかかる雲が晴れるのを期待しながら、
黙々と急登を登り、見晴らしの良い松ノ木沢の頭へ。
見上げる白毛門の斜面は山肌が露わ、無数のクラックが走る。
ダガーポジションで下ってくる人達とすれ違いながら山頂へ。
360°展望を楽しみながら息を整える。
向かいは一ノ倉沢の岩壁、東には先月登った赤城山塊、武尊山、日光白根山に至仏山、燧ケ岳。
青い空に白き峰が鮮やかに浮かび上がる。ここから長い稜線歩きが始まる。
笠ヶ岳から朝日岳へ続く稜線
この日は笠ヶ岳直下、登山道ギリギリ、テント幅だけかろうじて平らな部分にテントを張る。
香辛料ととろみが温かさを約束してくれるカレーうどんをいただき、
シュラフに潜り込むと待ちかねていたように風がテントを叩きつける。
夜中まで飽きる事なく続き、浅い眠りの中、テント泊久しぶりだなと実感してちょっとだけ嬉しくもある。
至仏山の上に日が昇る
4/11(日)
昨日の暴風が嘘のよう。朝焼けが至仏山の輪郭を型取る。
日が登りきる前のこの時間、山に行けない間ずっと恋しく思い出していた。
朝日岳からは中ノ岳、駒ヶ岳、ちっちゃくても八海山の越後三山が存在感を放つ。
三方の絶景を目に、下りはじめ、ふと振り向くと平らに見えるほど広い斜面と青空が、
視界を真っ二つに分けている。四方絶景!まだはしゃぐ元気あり。
歩いてきた稜線と谷川岳
いよいよジャンクションピークから積雪期ルート、上越国境へと足を踏み入れる。
先を行くソロの女性、後ろに続く男性二人組、そして私たちだけの稜線。
越後三山(撮影:Kさん)
大烏帽子岳から遠く巻機山も見えている
巻機山から中ノ岳を経て越後駒ケ岳まで続く稜線が目の前に広がる
遠くいくつものピークの果てに目指す巻機山が見えている。
柄沢山へ
この縦走で一番の標高差、柄沢山。山頂は大雪原。雲はなく、空は青い。
これ以上望むものはない。雪の斜面に氷のラップを被せたような、
フィルムクラストがパリパリ音を立てて楽しい。
居頭山へ
アップダウンが続き、クレバスに行く手を阻まれ、簡単にたわみもしない藪に分け入る。
スノーリッジを渡り、踏み抜く。心身ともに疲労がたまる。
歩き始めて10時間経過。巻機山までの緩やかな登りでさえもう無理。
避難小屋までの予定を変更して栂ノ頭で幕営。樹林の間、整地も不要。穏やかな夜が更ける。
4/12(月)
この日も好天のはずが、なんだか見慣れた景色。真っ白。
巻機山に着いたらしいが、景色もはっきりせず、山頂の印はケルンのみ。
あんな果てから目指してきたのになんだか呆気ない。いよいよ稜線歩きも終わり。
ヘアピンのように南西に向きを変えて最後のピーク前巻機山へ。
緩やかな登りも足に堪える。泡立つような雪原、周りは雲に覆われ、
朝日だけが少し透けている。足元だけを見ながら歩いていると、風が雲を蹴散らし、
目の前にずっと歩いてきた稜線が現れる。自分で歩いてきたルートが何よりの絶景。
泡立つ雪原
もうあとは下るだけ、と簡単に行かない井戸尾根ルート。
井戸の壁と名付けられた樹林帯の急斜面は、ツリーホールの落とし穴だらけ。
もう踏ん張る力は残っていない。体力も気力も余すところなく使い果たし、
その分心は満たされて、まだ桜咲く、桜坂駐車場に無事下山。
昨年後半体調を崩し、今年初めは緊急事態宣言での自粛もあり、
夏以来のテント泊山行。それも2泊3日。重いザックに肩も腰も痛いし、
足は自分のものと思えないぐらい思うようにならない。
それでもやっと山深くに身を置くことが出来て、ただただ幸せでした。
リーダー、難しいルーファイありがとうございました。
お裾分けしてもらったビールの美味しさ、忘れません。
また隙なく真っ白な時期に歩いてみたいです。
<参加者の感想>
にわかに歩荷トレを繰り返して、今回の山行に参加しました。
今シーズン一番のご褒美のような晴天!昨年果たせなかった白毛門を越え、
久しぶりの雪山縦走。
二日目は山を越えるとまた次のピークが待っていることに快感を覚えるようになっていました。
ペースはゆっくりゆっくりですが…
三日目の下山が、私にとっては一番きつかったです。
Kさん、ルーファイありがとうございました。
Tさん、Sさん、道中多くのサポート嬉しかったです。
(N)