コンテンツへスキップ

20190103‐05八ヶ岳広河原3ルンゼ(改訂版)

◆プロローグ

2,3年前、かつて行った阿弥陀の南稜P3のガリーに谷からアプローチするルートの存在を知り、一度はチャレンジしたのだがラッセル地獄で敗退。今回は暖冬のため雪は少なく、正月休みを利用しての計画だったので余裕があり、直前の天気予報は4日がベストだったので、それに照準を合わせることにした。

 

1月3日 早朝から高速を飛ばし11:30には舟山十字路に着いた。ゲートの前には既に車が10台近く止まっていた。思っていたよりも多い。広河原3ルンゼは有名なルートだから、明日は渋滞するかもね。車を降りて登山靴に履き替え出発した。林道を歩き堰堤を越えると阿弥陀岳が見えた。1時間ほどで二俣に着いた。テントは3張ほど。完全に水平ではないが、かなり広い場所で頑張れば何十張とテントが張れるところだ。積雪は3センチほどなので竹ペグは使えず、石で四隅を張った。明日のことを考えて18:00には寝たい。にしても時間があるので偵察に出た。本流の右岸を歩き、途中沢を横断しさらに上に行くと大きな岩が見えた。途中6人パーティーに会ったので上部の雪の状態などを聞きたかったが3ルンゼについてはあまり詳しくないようだった。その大きな岩の右側を登るとすぐにクリスマスルンゼ(右俣)との分岐に出た。私らが行くのは左の本谷だ。右のトレースとは対照的にトレースは薄かった。あまり人が入ってないようだ。でも確かにトレースは上まで続いている。心配していたことの一つ、クリスマスルンゼ(右俣)との分岐を確認できて安心した。それ以上先はナメ滝。アイゼンを履いていなかったのでそこで引き返すことにした。班長が青ナギの分岐はここからすぐ下の斜面にあるはずだと言った。気を付けて歩いているとピンクのテープが見えた。上まで続いている。トレースはないけどここに間違いないね。大きな岩のすぐ下の左岸側の斜面だ。テントに戻り、日本酒を飲みながら晩御飯の準備をした。晩御飯を済ませるとさっさと寝る準備をして18:00前にはシュラフに入った。明日は2年越しの山行を完登することが出来るだろう。状況によって下降路が変わるぐらいだ。青ナギから降りてもいいし、初見の中央稜が降りられそうならそこを降りてもいい。もしかしたら楽勝かもしれない。そう考えているうちに寝てしまった。

1月4日 4:30起床。いつものように鍋の残りの水分多めの雑炊を食す。6:30出発。昨日遅く帰ってきたパーティーがいたので、もしやと思い青ナギの分岐をもう一度確認した。トレースがついている。ここを下ったんだ。ということは3ルンゼをやったのかな。トレースがあれば迷わなくて済む。

私らは上流を目指した。ナメ滝をいくつかロープなしで登り、胎内くぐりをした。以前来たときは雪に埋まっていて行けなかった。そしてしばらく進むとなんだかよくわからない分岐に出た。右の沢だと思うのだがトレースが左岸の斜面を登っている。巻いているようにも見えるしよくわからない。本流の流れにそっていくと立った小さな滝がある。そこは登れないのか・・・。さんざん考えて左の沢を登ることにした。どこにいるかわからなくなり、せっかく計った方位も役に立たない。どうも違うなということになり、トレースを信じることにした。ここはたぶん1,2ルンゼと3ルンゼの分岐だ。

左岸にはナメ状の氷(3m弱)が付いていてロープなしで登れそうだったのでとりついた。しかし、氷が固くうまくアイゼンアックスがきまらない。突破してやろうと頑張ったが最後が乗り越えられないと判断。必死のクライムダウンで降りた。アックスを握りしめていたせいで指先に激痛が走る、しばらく悶絶した。気を取り直し、ロープを出して班長がリードで突破。トレースは明らかに斜面を沢沿いに移動。やはり小さな滝を巻いたのかもしれない。ロープを出してからはコンテ。またナメ滝がいくつか出てきて急登を登ると班長が叫んだ。

岩の間が3ルンゼ入口

 

ここが1.2ルンゼと3ルンゼの分岐だ!ということは3ルンゼのトポが今から始まる訳だよね。精神的に参った。急登続きで疲れてきていたからだ。積雪が今よりもあればもう少し歩きやすかったかもしれない。なんせ雪の下の氷は固く油断していると滑る。立っているだけでも体力を消耗する。そんな状態で立った滝なんか登れるのか。3ルンゼに入ると急なナメ滝を登った。30メートルの3段大滝が出てきた。かなり立ったアイスだ!2段目でピッチを切ることにして1ピッチ目は班長がリードで登った。2ピッチ目はao。滝の右側は高さがなかったので右から突破。そこから先は高さは大したことはないが垂直の壁が次々と出てきた。雪は少なく岩と硬い氷だ。氷はアックスを思い切り打ち込むと薄いため亀裂が四方八方に走る。アックスを何度も打ち込むと氷が壊れるので、亀裂を無視して登ることにした。アックスは真下に体重をかけるとよく決まる。それを維持しながら次のアックスを打ち込む。そうやって落ち着いて確実に登っていく。高さはないので少し頑張れば抜けることが出来る。でもこれがきつかった。P3に出たかったが、吹き溜まりがありラッセルになるので諦め、トレースの付いているP4へ進んだ。さらに急斜面を岩と氷と雪のなか登った。稜線に立ったときはくたくた。P4に出たつもりでいたが岩峰がP3に見える。P3ならこのまま青ナギまで下ることが出来るがP4なら山頂を目指したい。取りあえず、南稜を下ることにした。しかし、すぐにP3のガリーが見えた。やっぱり俺たちはP4に出たんだ。あのガリーを降りたくないから山頂を目指そう。班長が言った。確かにガリーは降りたくない。山頂を目指した。P4は危ないところが2か所あるがコンテで通過。私は、疲れてとぼとぼ歩いた。班長が山頂に着いたぞと叫んだ。P4からは20分もかからないことが分かった。

穏やかな雰囲気の山頂だった。

 

山頂には誰もいなかった。風も弱く快晴で景色は最高だった。ロープを束ねて二人で腰かけた。お湯を飲みホッとしたとき班長が、俺、もう沢登りはしない。次ここに来るなら南稜を歩きたい。雪稜がいい。と言った。確かに沢 (アイスクライミング)は、もう満足だ。ロープを出さなくてもいい山行もやりたいな。そう思った。

下山は、御小屋尾根か中央稜でまよったが、中央稜を下ることにした。途中で阿弥陀の北西稜との合流地点を通過した。八ヶ岳の中でも難しい部類のルートに入る北西稜。以前このルートを行ったとき、登攀を終えて稜線を歩く人を見たときはうれしかったのを思い出した。また行くことはあるのかな。と思った。

中央稜はトレースがしっかりついていたので楽勝だった。かなりの急斜面で、登ってくるのは大変だろうと思う。後半は完全に樹林帯に入った。ピンクテープを追ったトレースを歩いていたが、途中からは4区の赤い矢印を追っていた。長い水平移動のあと急斜面を下り沢に降りた。テントから少し上流に上がったところだ。水を汲みに沢を登り、テントに戻ったのは17:15。暗くなってしまった。全く楽勝ではなかった。そもそも、地形図上での1,2ルンゼと3ルンゼの分岐を間違えていた。もっと上流だったのだ。そのせいで1時間ぐらいロスしてしまった。でも完登することができたので良しとしよう。晩は、班長特製なんだかよくわからないけどおいしい鍋と冷えた焼酎を堪能した。そして翌朝下山した。

 

 

◆行動記録

1月3日 6:30今津駅⇒11:30舟山十字路→12:30二俣 偵察 18:00就寝

1月4日 6:30二俣→10:40 3ルンゼ入口→14:20阿弥陀南稜P4→(P3のほうへ少し下り引き返す)→14:55阿弥陀岳山頂→15:15中央稜下降→16:30(水を汲み)→17:30二俣(テント)

1月5日 8:30二俣→9:30舟山十字路 下山

◆感想

1月4日は平日だったからか、天気は良かったが誰一人として3ルンゼには現れなかった。そのおかげで貸し切りの3ルンゼを堪能できたかと言えばそうでもなく、トレースも怪しく人気がないので心細くもあり、精神的にもタフな山行となった。沢登り(アイスも)は尾根歩きの「陽」に対して、明らかに「陰」であり、何か暗さを感じてしまう。自分は尾根歩きが合ってるなと強く感じた山行となった。(班長)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です