予報がどうもはっきりしないと思ったら、次の台風がまた来るらしい。
雨の中を出発するのだから、あわよくば両方の、せめて一方の山頂を踏めたら儲けも
のだが今回もそれは厳しかった。
到着地笹ヶ峰キャンプ場はひっそり。テントを張っても水没の心配あり。
車中で眠ることにする。登山口では、環境保全の協力金を払い、
安全性の見地からあまり山行をお勧めしないようにやんわり言われたが、
黄色い濡れ落ち葉を踏みしめながら、歩みを進める。よく整備された木道。
雨音か沢の音か聞きたがえる「ゴーゴー」に阻まれて、控えめな紅葉は頑張ってくれてるのに、
少しもの足りない。登山道らしくなってくると油断のできないガラガラ道だ。
それを超えると滑りさえしなければ気持ちの良い木道歩きが続く。
ずっと歩いていたい気分だ。左右は白いモヤモヤしたガスの壁。
真正面だけ明るい兆しがちらっと。そこを下れば、8角ドームの黒沢池ヒュッテ。
これ以上の青空は望めないだろうと、あわただしく集合写真を撮る。
さあ、晴れ間が消えぬうちに妙高を制覇しなくては…。やはり小雨が追いかけてきた。
大倉乗越ではせっかくかせいだ標高をぐ~と下げる。ゴロンゴロンの岩とズボズボのぬかるみ。
そしていつかの台風でえぐれ落ちたと思われる道の左半分がなくなっている。
落ちたら這い上がれないような斜面ではない。「トラバース注意」とどこかでみたのは、
ここのことか。強そうな笹を数本つかみながら、足元を崩さないように恐る恐る渡り終えた。
ひと安心したところで運悪く嫌な雨が。この先同様の危険個所がなければよいが、
これ以上の眺望も期待できず、この程度の雨なら…と思えるうちに引き返すことにした。
先ほどの難所を再度渡ることになる。ヒュッテに戻った途端、本降りに。
撤退のタイミングは正解だったと思われる。
妙高山は、天候、季節、登る時間帯によって、コースタイムが読めない山だそうだ。
翌朝、オーナーからは、「今日は登れますよ。」と嬉しいお言葉。雨具はきっと役に立つ、
と装備を整えて出発する。スタート時間は少し押している。
午後の渋滞とレンタカーの返却時間を考えるともたもたしてはいられない。
温泉をカットしてでも、火打山の山頂は踏みたいものだ。
曇り空のせいで天狗の庭も本来の水の色を発揮できていない。
ライチョウにもお目にかかることもなかったが、幸い雨はほとんど気にならず火打山登頂は、
達成できた。360°ガスで真っ白だったなんてことはここでは言ってはいけない。
下れば三角屋根が双子のように並ぶ高谷池ヒュッテ。記念バッジを買う。
次回是非泊ってみたいおしゃれな小屋だ。あとは軽やかな木道歩き。
おまけに山日和になったらしく、早朝まで我々の独占状態だった登山道は、登山客でにぎわい、
私たちの泥んこぶりに驚かれる。そしてやはり信州の山に来れば、紅葉を堪能せねば終われない。
昨日は気に止める暇もなかったが、一日にして紅葉が進んだのか、今日はしっかり黄、オレンジ、
赤に鮮やかのグリーンを加えたグラデュエーションを拝むことができたのだ。
お陰で昨日の妙高山での悔しさは吹っ飛んだ。