岩場と高所が怖い私がアドレナリン全開で歩いた北方稜線の記録。
1日目は剱御前小舎から剣沢を下り、池ノ平小屋を目指す。

雷鳥沢キャンプ場から雷鳥坂を見上げると、目線の先には時の人(!)、一頭の熊が登山道の少し外れたところに。無駄に鈴を叩き鳴らしながら通過。
剱御前小舎からは剣沢の夏道を下る。



スラブの斜面は幸い乾いている箇所があり、張られたFIXロープを握りしめ杭の足場をゆっくりと確実に下りた。

真砂沢ロッジに到着すると、急登に備えジュースを一気飲みして潤った。
池ノ平小屋までの登り、たかが500mの高低差は沢から離れたせいもあって暑さで汗が額を伝う。仙人峠までは手拭いでパタパタと仰ぎ、暑い暑いと文句垂れながら登った。

池ノ平小屋に着いたのは16:30。予約していた個室に用意されていたのはストーブが焚かれた快適な寝床だった。
夕食までの間、五右衛門風呂に入ったり、小屋のご主人お手製のホタルイカ素干しを炙り、酒を呑んだりしながら今日の疲れを癒した。
明朝4:30
満点の星空の下、小屋スタッフの皆さんが手に持った灯りを振り「行ってらっしゃい〜」と声援をくださる。期待と緊張を胸に小屋を後にした。
さあて。
30分程歩いて展望台まで来ると看板が。

いつの間にか辺りは明るくなっていた。
谷を挟んだ向かいにモンローの唇から流れ落ちる滝、進行方向の先に小窓雪渓が見えた。

落石の恐怖に襲われながら小窓雪渓の取り付きまで下り、チェーンスパイクを装着。

緩やかな小窓雪渓をザクザクと快適に登る。
雪渓の上端からは、2560ピークの少し下からトラバースになる。目の前に小窓の王の岸壁が迫力満点に現れ裏剱にいる実感が湧いた。

発射台からはガレガレで凄まじい斜度の池ノ谷ガリーが見えた。先行2パーティが固まって登っているのが見えた。まじでアレ行くんかい…
ここから三の窓まではザレたバンド状の急坂を下ったのだが、これもとにかく緊張。

池ノ谷ガリーは右側へ取り付いた。荷重移動で一歩一歩慎重に登る。触れてもいない岩がガラガラと流れ落ちる。後続の仲間へ落とさないように歩くのは勿論、自分もガレと一緒に流されそうになったりするので細心の注意を払った。
そうこうするうちに池ノ谷乗越まで来た。一呼吸おいた後は垂直に切り立った岩壁を登る。

長次郎の頭と剱岳を捉え絶景が広がる。
ここから長次郎のコルへ向かうのだが

そこへ下りるには幾つかのルートがある。
私達は長次郎の頭を左から巻いて下りるルートを探し周辺を何度か行ったり来たりしたが分かりづらく、最終的には途中で稜線に上がり、FIXロープを伝って長次郎のコルに下りるルートをとった。

長次郎のコルからはひたすら山頂目指して登るのみ。剱岳の社が現れた時はホッとした。
休む間もなく別山尾根から下山開始。剣沢へ下りる。一般登山道とはいえアップダウンもあり長く、変わらない景色、さすがに飽きてくる。

実は翌日は大荒れの気象予報が出ていて、可能な限り室堂近くの雷鳥荘まで歩くのが望ましかったが、さすがにじんわりと効いてくる疲労感。
今宵は剣山荘にて、池ノ平小屋で仕入れたホタルイカの素干しを酒のお供に休息する事にした。
翌朝は笑っちゃう程の嵐だった。合間を見計らって外へ出たものの、剱御前を越えるまではまあまあな強風と視界悪だった。とはいえリーダーの的確な指示とルーファイ、歩行ペースのお陰で無事に帰って来れた。
北方稜線は裏剱の魅力が凝縮された、訪れる者を飽きさせない素晴らしいルートで、私はまたさらに山が好きになった。
9/27
室堂ー剱御前小舎ー剣山荘ー平蔵谷出合ー長次郞谷出合ー真砂沢ロッジー二股の吊橋ー仙人峠ー池ノ平小屋(泊)
9/28
池ノ平小屋ー剱岳展望台ー旧鉱山道取付ー発射台ー三ノ窓ー池ノ谷乗越ー長次郞のコルー剱岳山頂ー剣山荘(泊)
9/29
剣山荘ー剱御前小舎ー雷鳥沢キャンプ場ー室堂
