霧雨の白いベールの切れ間から見えたのは、丘に錦を広げたような色や質感の異なる草や低木が見事な表情を織りなす山肌。露に濡れた鮮やかな緑の中にほんのり色付いた赤や黄色が彩りを添える。麓は塩沢、十日町、小千谷と着物好きにはたまらない織物の産地。織姫伝説が語られ機織りの神として山岳信仰をあつめる山にふさわしい。山頂は池塘と呼ばれる池が幻想的で、天上の庭園が広がる御伽話のような風景が広がる。
出発予定の早朝5時時点で霧雨。7時時点で雨が止んでいなければ予定変更ということで、沢を巻きながら進む点線ルート【ヌクビ沢ルート】を中止。一般道の井戸尾根ルートハイキングに変更。雨模様に落胆する必要はなく、リーダーの判断や雨装備の経験値が上がるので喜ばしい限り。出発から雨具を纏い、白く霞がかった樹林帯を進む。樹林帯を抜けると本来は空が開け、なだらかな丘陵地が続く一面緑の稜線。今回は白いベールの切れ間からその姿を見ることができ、普段とは異なる神秘的で幽玄な風景でもあった。
山頂の避難小屋は、巻機山を愛する人々により、よく手入れされたウッド調の美しい小屋で室内に設置されたバイオトイレは衛生的で臭いも気にならない。トイレ横には自転車が設置されていて張り紙を読むと「使用前に前20回、後ろ10回ペダルを漕ぎ、便器内部のオガクズをかき回してください」と。これは一刻を争う時には拷問に等しいなと笑いが込み上げた。小屋の前の小道を3分ほど下ると急登にロープが張られ、小川から水も調達できる。小屋は100円の寄付と良心的過ぎる価格、使用後は備え付けのほうきで掃除し大切に使いたい。
夜は山飯としては珍しいステーキがメインディッシュ。バゲットに、チーズ、リッツ、トマトなど持ち寄り洋食の楽しい宴となった。
翌日の下山はさらに雨粒が大きく、樹林帯に囲まれた登山道は、粘土質で滑りやすく今回は軽量化で持参したトレランポール1本が活躍した。滑りやすい地面に突き刺し足をポール手前に置き使用すると滑り止めとして活躍した。小雨の場合はチェンスパも重宝するそう。 下山後は駐車場横の洗い場で靴も洗える。 500円の駐車場には、美しく快適なウッド調のトイレ、室内がウッドで仕上げられた休憩所は仮眠にも使用できる快適な環境。 この場所を守られている山の会の人々に感謝の気持ちでいっぱいになる。 帰りは越後湯沢のAM 6時から営業している”山の湯”へ。小説「雪国」の川端康成も浸かったというこのお湯。源泉掛け流しで泉質や温度が私的にヒットし、桶に入れた湯を頭から浴びる度に声が漏れるほど気持ち良かった。 帰路は車で10分ほどのところに、IC近く南魚沼道の駅で新米や葡萄、野菜、笹団子を土産に買い、隣接の地域食堂で魚沼産新米の定食を頂いた。サービスエリアとは一味違う温もりのある味。登山から地域の食、文化に触れる良き山行となった。